◆◆◆ 秋野深のHTML形式メールマガジン ◆◆◆
オンライン状態でご覧いただくと画像が表示されます
◆◆◆ www.jinakino.com ◆◆◆

 新疆ウイグル自治区の少数民族には一人っ子政策は適用されていないため、この新疆を旅していると、中国の他のエリアに比べて子供を目にする機会は格段に多い。
 もっとも、非常に人口の少ない民族でもない限りは人口抑制政策の対象にはなっていて、例えば、ウイグル族については、基本的に都市部では2人まで、農村部では3人まで、という制約が設けられている。

 カシュガルに限らず、農村や街中のバザールなどで多くの子供たちを見ていて、ひとつ思うことがある。それは、大人と子供の距離についてだ。その距離が非常に短く、大人が働く環境と、子供がいる環境が同じであったり、非常に近いところにあったりする、ということだ。
 なぜそういうケースが多いのか、と考えてみると、それは親の仕事の影響によるところが大きい。親が会社などの組織で働いていれば、子供が親の仕事を手伝う、あるいは、職場と自宅が隣接している、といったことは考えにくい。ところが、バザールで小さな商店を営んでいたり、農家で穀物や果物を栽培していたり、郊外で羊の放牧に従事していたりすると、働く親のそばに子供がいる時間が長くなる。

 ウイグル族を含め、多くの少数民族の人にとっては、大きな組織で働くことは現実的には考えにくい特別なことだ。少数民族によって経営されている会社組織が全くないわけではないけれど、大抵の場合、会社は漢民族資本である。そこで働くためには、当然、漢民族と同等に中国語が操れなくてはならない。
 少数民族の人と中国語の習得について話をする時、この種のことはよく話題に上る。中国語はわかりますか、という私からの問いに、様々な答えが返ってきたけれど、その中にはよく「中国語が上手なウイグル族は、会社で働いてる人たちだよ」というものがあった。当然、裏を返せば、会社というところで働くのに、中国語という厚い壁が立ちはだかっていることになる。それが、少数民族で「会社組織で働く」人がごく一部に限られる大きな理由だろう。

オンライン状態でご覧いただくと画像が表示されます

 農村やバザールや郊外の草原……。そうした場所で親子がともに仕事をし、家族が1日中ともに行動する光景を見ていると、親が自宅から離れた場所で働くという生活スタイルは、親と子、さらにはもっと一般的な大人と子供の関係のあり方に非常にも大きな影響を与えているように思えてくる。それは、大人と子供の間を決定的に隔てる環境でもある。

 けれども、だから子供のためには、大人と子供ができるだけ近い環境で過ごすのがよい、などと短絡的に言うつもりはない。
 大人と子供の間に距離感を生み出しているものが、一体どういうもので、その距離感の有無が大人と子供それぞれにどんな影響をもたらしているか。そう考えてみると、自分が無意識に生きている日常をふと省みるきっかけにはなるだろう。

 大人と子供の間に距離がそれほどない環境では、子供は常に親の目の届くところにいることになる。しかし、その表現は親の一方的な視点での話である。子供からすれば、親が常に目の届くところにいる、ということだ。そこが仮に職場であれば、子供は自分の親を他の大人と比べるだろう。仕事の能力、言葉遣いや態度、人間関係….…。仕事を手伝い、覚え、働き手となるような立場の子供ならば、なおさら嗅覚鋭く大人を観察することだろう。
 特にバザールを歩いていると、それを実感することもある。親の職場と自分の生活空間や遊び場が混在しているということに加えて、商品を売る客商売の世界に生きているからか、そういう子供の視線を時折感じる。

 これが子供にとってどのような環境であるか、ということだけではなく、大人にとってどんな意味があるのかということも考えてみると面白いかもしれない。
 職場での時間をはじめ、子供に見られることのない時間を長く持つ大人にしてみれば、ぞっとするような話だとも言えなくはないだろう。
 少々強引だけれど、こんな環境を想像してみて欲しい。仕事の邪魔はしないことを前提で、子供が会社で働くあなたの職場に自由に顔を出し、あらゆる所で全てを観察される ―――。
 もしかしたらそこで豹変するほどに変わるのは、いや、変わることを余儀なくされるのは大人のほうかもしれない。なにしろ、子供がずっと見ているのである。

Vol.42へ続く)

>> 旅のウイグル語 Vol.41
 今回は、人に関連する単語です。

アダム女性アヤル男性エル
子供バラ女の子クズバラ男の子オグルバラ
若者イギット老人ケリ

>> お知らせ(秋野深の作品掲載や活動など)
写真展開催中です
秋野 深 写真展「時の文様、時の色彩 -アメリカ西部-」

会期:2006年2月20日(月)〜4月2日(日)
会場:ギャラリー&カフェバー「クラインブルー」
    (東京都千代田区/地下鉄神保町駅より徒歩2分)
詳細(写真展の告知ページへ)

アメリカ西部の大自然の営みが、長い時をへて創り出した天然の文様や色彩に焦点を当てた作品を展示します。
(作品はご購入いただけます)

撮影地:パリア・キャニオン、アンテロープ・キャニオン
キャニオン・エックス、カイバブ・ナショナル・フォーレスト、
ザイオン国立公園、グランド・ステアケース・エスカランテ国定公園
デスバレー国立公園、ヨセミテ国立公園など

協力:アメリカ西部5州政府観光局、ハーツレンタカー



『W'est』2006年版
(アメリカ西部5州政府観光局)に作品掲載

 P35-36「緑の大地で、歴史を語る岩巡り」に、サウスダコタ州で撮影した写真とエッセイが掲載されました。

 バッドランズ国立公園、ウィンドケーブ国立公園、マウントラッシュモア、クレージーホースメモリアルを紹介しています。



『NEUTRAL』発刊第6号(白夜書房)に作品掲載(12月26日発売)

第6号の特集は「水と地球 〜水こそすべて〜」です。秋野の作品(写真・文)は以下のページに掲載されています。

P93-P95
「水が生み出す奇跡の風景」
ヨセミテ国立公園(アメリカ/カリフォルニア州)、アンテロープキャニオン(アメリカ/アリゾナ州)、ゴブリンバレー州立公園(アメリカ/ユタ州)、太魯閣峡谷(台湾)、他

P116-P121
「海を見た人」
(中国・新疆ウイグル自治区・パミール高原)

>> デスクトップにシルクロードの壁紙作品集を!
 壁マート(GMOモバイルアンドデスクトップ株式会社)にて、秋野深のデジタル作品集「シルクロード旅情」(10枚800円)を発売中です。 ⇒ 詳細
 Docomo、Vodafone、EZ-web、H"Linkでは、携帯待ち受け画面として発売されています。

>> 秋野深(あきの・じん)について
 1970年生まれ。福岡県出身。会社員生活を経て、現在はフリーランスの写真家・紀行作家。アメリカとアジア(シルクロード、イスラム圏、東南アジア)を主なフィールドとして、自然風景、建築物、人々の生活や文化を撮り続け、雑誌やウェブでは旅のフォトエッセイの連載も手掛けている。
 2006年より、アメリカ・インディアナ大学研究所を中心とする国際的な芸術と科学の研究・展示プロジェクト「Accuracy & Aesthetics」のオフィシャルフォトグラファーとして、5年にわたって世界5大陸の10都市を訪問・撮影予定。
 ニューヨークアートギャラリー「Renee Fotouhi Fine Art」への作品登録、ナショナルジオグラフィック・WWF(世界自然保護基金)の共同制作ウェブサイトへの写真提供をはじめ、作品は海外の媒体でも紹介されている。
 『イラン・思考の旅』で、第1回文学メルマ新人賞紀行文部門大賞を受賞。アメリカで開催された「インターナショナル・フォトグラフィー・アワード」の2004、2005のプロフェッショナル・ネイチャー/ランドスケープ部門で「オーナブルメンション」賞を2年連続受賞。
 ⇒ 活動や作品の詳細については、Jin Akino Photography をご覧ください。
・バックナンバーの閲覧はこちらから
・配信の登録解除はこちらから
・このメールマガジンに対する感想、秋野深へのお問い合わせ等は、akinojin@ybb.ne.jp

Copyright© by Jin Akino. All rights reserved.掲載記事・画像の無断転載を禁じます