◆◆◆ 秋野深のHTML形式メールマガジン ◆◆◆
オンライン状態でご覧いただくと画像が表示されます
◆◆◆ www.jinakino.com ◆◆◆

 トルファンでもクチャでも、そしてこれはこの後訪れる、新疆ウイグル自治区の他の街でも共通していることだったのだが、宿のことで意外というか、驚いたことがある。

 私はたいてい、どの国に行っても、いわゆる安宿と呼ばれるところに泊まる(または宿がなければ一般家庭に泊めてもらう)ことが多いのだが、料金が安い分、当然そういう所は建物や部屋や施設が簡素であることが多い。
 ところが、今回の旅では、街で一番安そうな安宿を見つけても、ほとんどの場合、星がいくつかついていそうな高級ホテルが同じ敷地内の別棟などで安宿を兼営していることが多かった。場所によっては、その立派なホテルの一部の階だけ、一部屋のベッド数を増やしてドミトリー形式にしているところもあった。一応、宿の名前も敷地も同じなのだけれど、1泊の料金は、立派なホテルの部屋と安宿の部屋では10倍以上差があったりもするのである。

 国によっては、または中国の他の地域では、もしかしたらあまり珍しくないのかもしれない。ただ私はそういうタイプの安宿に泊まるのが初めての経験だったので、バックパックを背負って立派なガラス張りの入り口を通って"フロント"へ行き、きちんと制服を着こなした従業員に「ドミトリーは一泊いくらですか」と言っているのは、なんとも不思議なものだった。

 私を病院へ連れて行ってくれたのは、その立派なホテルのフロントで働いている漢民族の人と、安宿の部屋を掃除していたウイグル族の人だった。
 車を降りて、私がもうろうとしながら病院へ入ってみると、そこは、ベッドが2つ、椅子が5つ、医師の机が1つ置かれただけの小さな小さな10畳ほどの病院だった。切り盛りしているのは、漢民族の女性医師1人とウイグル族の看護士2人。
 すでに10人くらいの患者さんが順番待ちをしていて、その列は病院の入り口の外まで溢れていたので、医師も看護士もその狭い病院の中を忙しそうに終始走り回っていた。

 私は、一番奥のベッドに横になって、体温、血圧をチェックされながら、身振り手振りのジェスチャーや、漢字の筆談や覚えたてのウイグル語など、ありとあらゆる手段を使ってどうにかコミュニケーションをとった。
 もっとも、ウイグル語については、クチャまでの長いバスの旅の間に、隣の席のウイグル族の人に教えてもらった単語を並べて「メン トゥニュギュン、オプトゥブス、ビレン、トゥルパン、ディン、キャルディム」(=私は昨日、バスでトルファンから来ました)などと言ってみて、その場にいる人を驚かせたり喜ばせたりするのには十分だったけれど、自分の病状の説明にはまるで役に立っていない。
 さらに、周囲の人たちが喜んで「もっとウイグル語で何か言ってみてくれ」と急かすので、「レッシム、タッサム、ボラムドゥ?」(=写真を撮ってもいいですか?)と言ってみると、またみんなが大喜び。

 脇に挟んでいた体温計をふと思い出し、確認してみると、38度5分。
 医師が、薬の入った箱を持ってきて箱に貼られたシールの文字を指差す。
 「日本人なら漢字が読めるでしょう? この薬は使ったことある? 多分知ってると思うけど」
 どうやらそんなことを言われているらしいので、私は箱を手に取り、薬の名前らしき文字を見てみる。
 そこには、生まれてこのかた一度も見たことのない漢字が、6つ並んでいた。

Vol.25へ続く)

>> 旅のウイグル語 vol.24
 先週に続いて、切符を買う時などに知っておくと便利な表現をご紹介します。時間を表す言葉は、旅の様々な場面で役に立ちます。交通機関を利用する時だけでなく、宿泊先を探す時、誰かと待ち合わせをしたり会う約束をしたりする時など・・・。逆に、間違えたり、勘違いがあったりすると、旅のスケジュールにも影響しますので、やはり早めに使えるようになると便利ですね。

エティゲン (=朝)
チュシュ (=正午)
キュンドゥズ (=昼)
ケチ (=夕方、夜)

>> デスクトップにシルクロードの壁紙作品集を!
 壁マート(GMOモバイルアンドデスクトップ株式会社)にて、秋野深のデジタル作品集「シルクロード旅情」(10枚800円)を発売中です。 ⇒ 詳細
 Vodafone、EZ-web、H"Linkでは、携帯待ち受け画面として発売されています。

>> 秋野深(あきの・じん)について
 1970年生まれ。福岡県出身。会社員生活を経て、現在はフリーランスの写真家・紀行作家。アメリカとアジア(シルクロード、イスラム圏、東南アジア)を主なフィールドとして、自然風景、建築物、人々の生活や文化を撮り続け、雑誌やウェブでは旅のフォトエッセイの連載も手掛けている。
 2005年より、約5年間にわたる国際的な芸術と科学の研究・展示プロジェクト「Accuracy & Aesthetics」のオフィシャルフォトグラファーとして、世界5大陸の10都市を訪問・撮影予定。
 ニューヨークアートギャラリー「Renee Fotouhi Fine Art」への作品登録、ナショナルジオグラフィック・WWF(世界自然保護基金)の共同制作ウェブサイトへの写真提供をはじめ、作品は海外の媒体でも紹介されている。
 『イラン・思考の旅』で、第1回文学メルマ新人賞紀行文部門大賞を受賞。アメリカで開催された「インターナショナル・フォトグラフィー・アワード2004」のプロフェッショナル・ネイチャー/ランドスケープ部門で「オーナブルメンション」賞を受賞。
 ⇒ 活動や作品の詳細については、Jin Akino Photography をご覧ください。
・バックナンバーの閲覧はこちらから
・配信の登録解除はこちらから
・このメールマガジンに対する感想、秋野深へのお問い合わせ等は、akinojin@ybb.ne.jp

Copyright© by Jin Akino. All rights reserved.掲載記事・画像の無断転載を禁じます