私が少しでも箸を休めようものなら、「さあさあ、遠慮しないでどんどん食べてください」と促され、チャイ(お茶)を一口飲めば、すぐに注ぎ足される。
私の反応にみんな興味津々といった感じで、一口食べるごとに、私は周囲の人に顔をのぞき込まれては、「ヤクシ?ヤクシ?」と質問攻めにあった。
ウイグル語で「ヤクシミシズ?」は「元気ですか?」という意味だから、「ヤクシ」はきっとgoodの意味なのだろう。その時、ウイグル語はまだ「ヤクシミシズ?」「ラフマットゥ(=ありがとう)」「ヤポンルック(=日本人)」しか覚えていなかった私は、そう納得して、「ヤクシ、ヤクシ」と笑顔でうなずいてみせていた。
その場には日本語はもちろん、英語を話せる人も全くいなかったので、コミュニケーションは大変だった。それでも私を囲んだ数人の男性との、ほぼ100%ジェスチャーの会話の中でいくつかの単語がわかるようになり、私はその全てをノートに書き取っていった。
私が持っていたウイグル語と日本語のシンプルな自作の対訳表も、彼らにとってかなり興味深いものだったようで、その場の全員が回し読みしていた。ただ、私が用意してきた対訳表は、ウイグル文字で書かれたものではなく、「元気ですか?= yakzimsiz ヤクシミシズ」というふうにウイグル語の発音をアルファベットとカタカナで表記したものだった。対訳表を手にした人の半分くらいは「自分はアルファベットが読めない」と言って首を横に振っていたけれど、彼らが対訳表を指差しては、何度も「ヤポンチェ」「ウイグルチェ」と繰り返すので、それぞれ「日本語」「ウイグル語」を意味する言葉だと言うことは理解できた。
たしか、ウズベキスタンでも「〜語」は「〜チェ」とか「〜チャ」とか言っていたような気がする。「ラフマットゥ(=ありがとう)」はウイグル語もウズベク語も同じだし、言葉の面でも共通点は多いのかもしれない。
私は、ウズベキスタンで現地の人が英語のことを「アングレッチャ」というふうに発音していたことをふと思い出し、試しにノートの端に「ABC」と書いてそれを指差し、ウイグル族の人たちに「アングレッチャ、アングレッチャ」と言ってみた。すると「アングレッチャ」では通じなかったが、「それはイングリズチェだ」と教えてくれた。
いろいろな人が入れ替わり立ち替わり居間にやってきては、私を見つけて笑顔で手を振ってくれる。「今日は日本人が来てるぞ」なんてあちこちで言われてしまっているのだろうか。まるで私が主賓みたいになってしまっていてかえってまずいのではないか、とまた少し心配になってくる。
ところが、私がそんなことを考えながら、周囲を見回して様子をうかがったり、箸を休めたりしようものなら、「さあさあ、ポロをもっと食べてください。ナンもまだたくさんありますよ。チャイをもう一杯いかがですか。どうぞ、どうぞ、遠慮なんかしないで」とすかさず始まってしまうのである。
(Vol.7へ続く)
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